自己紹介
私たちは神経筋疾患,特に筋萎縮症の診療に携はる国立病院・療養所の有志です
このHPは神経筋疾患の患者さんと,その診療に携はる医療関係者に,臨床に関する充分な情報を提供することを趣旨とします
検索エンジンで探すとインターネット上には,日本筋ジストロフィー協会を初めとして沢山の団体や患者さん個人のHPを見つけることができ,リンクを辿れば病気や療養に関する多くの情報を得ることができます.またパソコン通信「夢の扉」には専門の先生が質問に答へて下さる「診察室」も設けられてゐます
これだけの情報源があるのに何故新たにHPを開設するかといふと,患者のニーズが必ずしも行政や医療機関に反映されてゐるとは言へない今,患者さんに正確な情報が伝はり,老人力ならぬ患者力が発揮されねばならないと考へるからです
とは言ふものの私自身は筋萎縮症に関しては素人同然ですので,主な内容は専門の先生にお願ひして書いて戴きます.また暇を持て余してゐる訳ではないので更新も頻繁には出来ませんが,質問を戴ければインターネットでも採用されてゐる
best effort 方式で回答を掲載したいと思ひます
best effort
インターネットではIPプロトコルを用ゐてゐます.こいつの特徴は,通信の相手にIPパケットを送るべく「最大限の努力はするけれども,届かなかつたら御免ね」といふ点で,これを「best
effort」と呼びます.TCPやUDPは,IPとはこんなもんだと諦めて,返事が来なければ再送する仕組みになつてゐます
筋萎縮症
筋萎縮症では,原因が筋肉にあるか,筋肉を動かす神経にあるかを問はず,筋肉が痩せて動かなくなり,日常生活が不自由になるばかりか,呼吸や嚥下といつた生命を維持するのに大切な機能も損なはれます.神経筋疾患を診断・治療する専門機関としては,大学病院を初めとする多くの病院の神経内科や小児科,整形外科がありますが,病気が進行して日常生活にも不自由をきたす様になつた患者さんの面倒をみてくれるところは多くはありません.同居する介護者に恵まれたり,介護システムの充実した地域に住んでゐる患者さんは在宅療養も可能ですが,自宅で充分な介護が得られない方は長期療養の可能な医療機関に入院されることが屡々です.この様な疾患は神経筋疾患に限らず多岐に亘りますが,国ではごく一部の特定疾患を「政策医療」と定め,国立病院・療養所では「政策医療」担当施設として特定疾患の患者さんの外来診療と長期療養を担当してゐます.筋萎縮症もその一つです.
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)
DMDは伴性劣性の遺伝疾患で,筋ジストロフィーの中では最も頻度の高い疾患です
巷では「10歳前後で歩行不能となり,10代半ばで呼吸不全や心不全が顕在化し,20歳前に大半が死亡」する疾患として理解されてゐます
厚生省の筋ジストロフィー研究班の努力により,呼吸不全や心不全などの合併症の対策が確立され,30歳を超える患者さんも稀ではない現在でも,多くの医療機関では尚この迷信が信じられてゐます.現にこれを書いてゐる私も某大学の神経内科にゐた頃まではさうでした.十数年前に現在と同じ筋ジス担当施設にゐたので体外式人工呼吸器のあることは知つてゐましたが,勉強不足の所為でNIPPVなんて知りませんでした.こんな医者にかかつた患者や家族こそ迷惑千万で,充分な知識を得られないまま「治らない病気なら,かからなくても同じだ」と考へても不思議ではありません.私たちのところには,充分な情報が得られないまま脊柱や胸郭変形が進んで呼吸不全に陥つた患者さんが紹介されてきます.筋ジス担当施設ではコンセンサスとされてゐることが,世間の常識になつてゐないことを歯痒く思ひます
これまでの数年間が筋ジス医療の進歩の期間であつたとすれば,今はこの進歩を広く伝達する時です.このHPが幾らかでもそのお役に立てればと思ひます